しのだちぃ

元アートディレクターです、独自のイラストを添えて連日更新しております、、

階下の彼女とママチャリ、、


これは書籍ではありません、▲わたしの挿絵です、、



もう2年近くにもなる、
わたしの住むアパートの駐輪場に
チャイルドシートを取り付けたママチャリが、
放置されていてしっかり錆びついている、
これは、例の女性のママチャリです、、


わたしは3階、この女性はすぐ真下の2階、
ここはワンルームでシングルしか住めない、、
ワンルームとは聞こえがいいが、
マンションでもなく、ハイツでもない古びたアパート、、
彼女はたぶん別居生活の一時的な避難だろうと、
わたしは事情を察した、、


そうは思いはしたが、それがもう2年が過ぎた、、
先日、ベランダで洗濯物を干す彼女と
下を通りかかったわたしは一瞬目が遭った、、


30才後半だと思う、髪を無造作に団子にして
気難しそうな怖い形相でこちらを見ていた、、
怖い、わたしは関わりたくないと思い、
すぐに視線をそらした、、


それから一週間ほど経つと、
階下の彼女が時間通りに動くことに気づいた、、
朝8時半から9時まで、椅子を蹴とばすような
そんな大きな音を毎朝3回立てること、
そして、それを何度も引きずる音、、


これは掃除機を無造作に足で蹴とばしながら、
掃除をやっているのだろうとわたしは思う、、
あの彼女の顔つきからすると、やけくそ、くそっ!
とそんな蹴とばす姿も思い浮かぶ、、



そして、夜の10時半になると、
コンコンと木槌のようなもので、おなじ間合いで
何かを強く叩く音が、かれこれ30分ほど続く、、
う~、これはもしかしたら木工作業ではないかと、、


というのは、わたしも昔は、
深夜にそのようなことをしたこともある、
これが彼女の生活の糧なら我慢しよう、
そう思いわたしは耳栓をして寝ることにした、、


でも、今日はこのコンコンの音が30分も続いている、
これは深夜の床に響くし、階下ならなおさらのこと、
時計に目をやると、12時を廻ったところで音がやんだ、、



わたしは耳栓を外した、、
でも彼女の事情を思い巡らすとわたしは眠れなかった、
彼女が持ち込んだママチャリに取り付けられた
チャイルドシートは雨に打たれて薄汚れている、
タイヤはぺしゃんこになって2年も放置されたまま、、


なぜ、チャイルドシートを取り外さないのだろうか、
わたしだったら外して新たに出直すのに、
もしかしたら、彼女は戻るつもりなのだろうか、、


わたしはその日も眠れなかった、、
そして朝になると、彼女はまた椅子を
蹴とばすような音を何度も立てる、それを思うと、
ああ、今日も彼女は元気なんだ、
とわたしは安心したりもする、、





I STARTED A JOKE - (Keyboard Cover)


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